毎年お正月になると、子供が親戚などからもらうお年玉。
1シーズンだけでもある程度まとまった額になり、しかもそれを毎年もらっているわけですが、このお金はそのまま貯金しておくだけでいいのでしょうか?
子供の欲しいものなどに一部使ってしまうこともあると思いますが、残ったお金を高校卒業までと考えると18年間も保管しておくわけです。
これだけ長期の時間的な余裕があればもっと有効に活用する方法はないのでしょうか?
この記事では、お年玉を有効に活用していくために貯金以外の運用方法について考えてみたいと思います。
もらうお年玉の金額は年々増えている
学研教育総合研究所の「小学生の日常生活・学習に関する調査」(2019年調査)によると、小学生のお年玉の平均総額は約21,047円となっています。
2016年では約19,056円、2017年では約19,386円でしたので、もらうお年玉の総額は年々増加傾向にあると言えます。
親世代が子供のころは預金金利も高く、もらったお年玉はしっかり貯めておくというのがある意味正解だったのかもしれません。
しかし、現在の低金利時代において、当時の高金利時代と同じようなやり方でお年玉、つまりは子供のお金を運用していくというのが、子供にとっても本当に有意義な方法なのでしょうか?
お年玉の運用方法を考える
ではどのようにすれば年々増えるお年玉を効果的に運用できるのでしょうか?
また、長期の時間的な余裕がある中で、せっかくもらったお年玉を子供のために有効に活用していく方法はないのでしょうか?
ここでは大きく2つの方法についてみていきたいと思います。
それは「貯蓄」と「投資」です。
「貯蓄」の説明はいらないと思いますが、具体的な方法としては「預金」すること、つまりもらったお金をそのまま銀行に預けることです。
貯蓄(預金)は今までもやってきた運用だと思いますが、上でも書いた通り、これから先も “貯蓄(預金)だけが正解なのか” ということは考えていかなければならないと思います。
一方、「投資」とは株や不動産、債券などに資金を投じることです。
具体的な方法としては株や不動産、債券など、投資する金融商品は数多く存在します。
貯蓄との違いは元本が保証されていないということです。
元本が保証されていないということだけをみると、投資のデメリットは大きいように思いますが、本当に投資はデメリットだけなのか?についてはこのあと詳しくみていきます。
銀行にお金を預けてもほとんど増えない時代において、貯蓄(預金)以外の運用方法を考えておくことは今後ますます重要になってきます。
ただ、いきなり株や不動産の話が出てきても「難しい…」と感じてしまうと思います。
ですので、ここでは素人の初心者が投資を始めようとした場合、はじめの一歩として現実的な「投資信託」を投資の具体的な方法として話を進めていくことにします。
最近は銀行の窓口でも投資信託のポスターが貼られていたりするので、名前は聞いたことがあるという人もいるかもしれません。
投資信託とは簡単に言えば、みんなから集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめて、運用の専門家が投資した人に代わって株や不動産、債券などを運用してくれるものです。
私たち個人とすれば、A社とB社の株はどっちがいいんだろう…、CマンションとDマンションの価値はどちらが今後上がるのか…、などと個別の株や不動産について考える必要がないため、投資初心者にとっては最適な商品だと思います。
また、投資信託の商品によっては数千円、もしくは数百円から始められるものもあり、小さいリスクでスタートできるということも大きなメリットです。
このようにこれまでもやってきた「貯蓄」と、これからは考えておきたい「投資」について、ここから詳しくみていきたいと思います。
「貯蓄(預金)」のメリット
まずは貯蓄(預金)のメリットについてみていきましょう。
元本が保証されている
元本保証は預金の大きなメリットです。
お金を貯蓄することを教えられる
将来、もらったお金や稼いだお金を好き勝手使わずに、計画的に貯蓄をするということを子供に教えていくことは重要だと思います。
預金は元本が保証されているので、お金が貯まっていく感覚を実感させるには最適な方法です。
何も学ばなくても始められる
預金すること自体にリスクはないので、前提知識なしで思い立ったらすぐ始められます。
「貯蓄(預金)」のデメリット
貯蓄(預金)のデメリットは次の通りです。
運用利益(リターン)はほとんど期待できない
現在、大手銀行の金利は普通預金で0.001%、定期預金でも0.002%です。
ほぼ無いに等しいですよね。
お金を預けていても、預けているだけでお金が増えるという実感を得ることはないと思います。
金融教育の機会を与えられない
お金を預けているだけなので、預けているお金を自分で運用するということはありません。
金融教育の場においては、
「魚(お金)を与えるのではなく、魚の釣り方(お金の増やし方)を教えるべきだ」
と言われることもあります。
リターンがほとんど期待できない預金においては “魚の釣り方(お金の増やし方)” を教えられないわけです。
「投資(投資信託)」のメリット
次は投資(投資信託)のメリットについてみていきましょう。
預金よりもリターンを期待できる
当然リスクは増えますが、預金に比べればリターンが期待できます。
預金にはない “お金を増やす” という実感を得ることができると思います。
金融教育の機会を与えられる
ここが一番大きなメリットだと思いますが、投資を行うことで金融教育の機会を与えることができるようになります。
投資はリスクとリターンが存在するので、お金が増えることもあれば減ることもあります。
子供のときから投資について知っておけば、「投資をすれば楽にお金を増やせる」などという宣伝文句に将来騙されることもなくなるでしょう。
例えば株を運用している投資信託を購入したとすると、運用されている株式会社のニュースが気になったり、日経平均株価の意味を知りたくなったりすると思います。
このような金融の世界に触れるようなきっかけを、投資によって与えることができるのではないでしょうか。
もし親であるあなた自身も投資の経験がなければ、親子一緒に学んでいく良い機会になると思います。
「投資(投資信託)」のデメリット
投資(投資信託)のデメリットは次の通りです。
元本が保証されていない
これは投資の大前提ですが、投資信託は元本が保証されていません。
当然、1万円投資したものが、9千円の価値になることもあります。
投資を始めるには学習が必要
これも当然と言えば当然ですが、投資を始めるためにはまず投資のルールを学習する必要があります。
野球をするためには野球のルールを学習する必要がありますし、車を運転するには交通ルールを学習する必要があります。
投資もルールを学んでから始める必要があるわけです。
ただ難しく考える必要はありません。
もちろん専門用語は出てきますが、基本的な仕組みと基本的な用語を理解すれば、投資信託を始めるための知識としては十分です。
あとは投資をやりながら学んでいくしかありません。
いくら投資経験者でも、投資における正解は誰もわからないのです。
運用の実践方法を考える
お年玉の運用方法について「貯蓄」と「投資」のメリット/デメリットをみてきました。
「貯蓄」と「投資」のメリット/デメリットがわかったところで、具体的にはどのようにお年玉の運用を実践していけばいいのでしょうか?
おすすめは「貯蓄」と「投資」に半分ずつ資金を分けて運用していく方法です。
ここでは「ハイブリッド型」の運用と呼んでいます。
ハイブリッド型の運用とは?
ハイブリッド型の運用では「貯蓄」と「投資」に半分ずつ資金を分けて運用していきます。
例えば、ある年に総額2万円のお年玉をもらったとすると、1万円は預金に、もう1万円は投資信託に、という形で資金を分配し運用していくわけです。
ハイブリッド型の運用をすることで「貯蓄」と「投資」のメリットを良いとこ取りすることができます。
資金の半分は預金として預けるので、元本が保証されリスクが軽減されます。
また、貯蓄としてお金を貯めていく実感も得ることができるでしょう。
そして残りの半分は投資信託に投資します。
投資によって利益(リターン)を得ることもできるので、預金にはない “お金を増やす” という実感を得ることができると思います。
また、金融教育のきっかけを与えることができ、魚(お金)を与えるのではなく、魚の釣り方(お金の増やし方)を教える機会にもなります。
このようにハイブリッド型の運用とは、リスクを軽減させながら投資できる環境も構築していくという方法です。
お年玉(子供のお金)は将来のためのお金なので、貯蓄以外の運用方法を模索している人、お年玉の全額を投資するのは心配という人に適した方法だと思います。
ハイブリッド型運用の準備
ハイブリッド型運用を始めるための準備は大きく2つだけです。
ひとつは銀行口座の開設、もうひとつは証券口座の開設です。
銀行口座が預金をするための口座で、証券口座が投資信託を購入するための口座です。
どちらもお子さんの名義で作ることをおすすめします。
お子さんが幼い間は親が口座を管理することになりますが、ある程度成長したときには口座をそのままお子さんに渡せるからです。
証券口座は聞き慣れないかもしれませんが、株や債券などの取引を行う証券会社で開設する口座のことです。
投資信託を購入するために証券会社で口座を開設する必要があります。
上でも書きましたが、今は銀行でも投資信託を購入することができます。
しかし、証券会社に比べると銀行のほうが取引手数料が高くなる傾向があります。
銀行のほうが慣れ親しんでいますし、証券会社はなんとなくハードルが高いように感じますが、大変に感じるのは最初の口座を開設するときだけです。
口座さえ作ってしまえば、“投資信託を購入する” という手順や手続き自体は、銀行でも証券会社でもほとんど変わりません。
長期にわたって取引(投資信託を購入)していくことになるので、取引手数料がより低い証券会社を選んでおいたほうがいいです。
証券口座についてはもうひとつ注意点があります。
それは子供の証券口座(未成年口座)を開設する際は親も同じ証券会社に口座を持っている必要があるということです。
事前に親の証券口座を開設しておく必要がありますが、未成年口座と同時に申し込むこともできますので、親名義の証券口座も開設するようにしましょう。
未成年口座を開設するために仕方がないので親も証券口座を開設しておく…、で終わらせてもいいのですが、せっかく親も証券口座を開設するわけですから、親は親でお小遣いを使って少し投資信託を買ってみるなど、親子で投資を始める良い機会にもなるのではないでしょうか。
ハイブリッド運用の始め方
銀行口座と証券口座ができたら、あとは「貯蓄」と「投資」をハイブリッドで運用していくだけです。
運用の大きな流れは次の図を見てください。

銀行口座への入金
例えば、ある年に総額2万円のお年玉をもらったとしましょう。
その2万円をまず銀行口座に入金します。
そうすると銀行口座の残高は2万円になります。
証券口座への入金
次に銀行口座を経由して証券口座に1万円を入金します。
証券口座の場合、一般的には証券口座と同じ名義の銀行口座を経由して入金します。
銀行口座を開設するときにはネットバンキングを同時に申し込んでおくと便利です。
ネットバンキングがあると、インターネット上で入金手続きが完結しますし、入金手数料もほとんどかからないのでお得に利用できます。
証券口座では入金がされると「買付余力」というところに入金した金額が反映されます。
買付余力は投資信託をいくら分買えるかを表したものです。
1万円入金すれば買付余力は1万円なるので、1万円までの投資信託が買える状態ということになります。
投資信託の購入
買付余力に入金額が反映されれば、あとは投資信託を買うだけです。
色々な種類の銘柄があるので、初めはリスクが少なさそうな銘柄を選んで購入しましょう。
ここで投資信託の買い方としてひとつポイントをお伝えしておきます。
投資信託は1度に1万円分を購入するのではなく、何回かに分けて1万円分を購入するといいです。
投資信託は価格が上がったり下がったりするので、価格が高いときに全額を購入しないようにリスクを分散させるためです。
これを投信積立と言って、例えば1万円を10ヶ月に分けて、毎月1,000円ずつ購入するようにします。
また、自動で積み立てを行える証券会社もあり、最初に期間や金額を設定すれば、あとは決まった期間で決まった金額を自動で購入してくれるようになります。
最初に毎月1,000円分を購入するように設定してしまえば、あとは購入については気にすることなく、運用状況だけチェックしておけばいいという仕組みが作れるのです。
このように投資信託が購入できればハイブリッド運用の完成です。
資金の半分は預金でリスクを抑えつつ、残りの半分は投資で利益を狙いながら金融の世界に触れられる環境を構築できるようになります。
ちなみに我が家にも保育園児の子供がいるので、子供のお金を大事に有効に将来につなげていきたいと思い、ここまで説明した「貯蓄」と「投資」をハイブリッドで運用できる環境を作っています。
我が家の場合は、銀行口座をゆうちょで開設し、証券口座をSBI証券で開設しました。
資金の半分でしか投資は行っていないので当然ローリスクローリターンの運用ですが、ほんのちょっとの利益が出ただけでもやっぱり嬉しいものです。
まだ子供は小さいですが、リスクについての教育は行いながら、リターンの喜びを一緒に分かち合える日が早く来るといいなと思っています。
まとめ
お年玉を有効に活用していくために「貯蓄」と「投資」のハイブリッド型運用について説明しました。
貯蓄以外の運用方法を探している人、お年玉の全額を投資するのは心配という人は、リスクを軽減させながら投資できる環境も構築していくハイブリッド型運用を始めてみてはいかがでしょうか。
金融に関する知識や情報を正しく理解し、主体的に判断することができる能力を金融リテラシーといいます。
銀行にお金を預けてもほとんど増えない時代において、この金融リテラシーはますます重要になってきています。
金融教育が十分ではない日本だからこそ、金融の世界に触れられる環境を作ってあげることは、子供の将来にとってとても大きな役割を果たしてくれるものだと思います。